こんにちは。薬剤師のクエ美です。
今日は、いざという時に困らないように知っておくと便利!
子どもの熱さましの坐薬の使い方 第三弾 です。
坐薬は、子どもの体重によって使う量が変わることは、第一弾でお話しました。
(まだ読んでおられない方はこちらへ↓↓)
アセトアミノフェンを主成分とする坐薬は、お薬が50mg、100mg、200mg、400mg(400㎎は、ない製品の物もあります)の4種類しかありません。
子どもの体重に合わせてお薬を使うということは、その4種類の中に使える量がない時は、それを切って適切な量にしてから使う必要があります。
そういった場合に処方箋に書かれるのが「1回に1/2個」や「1回に2/3個」などの分割指示です。
坐薬は入れやすいように頭でっかちな形をしています。
そのため、分割が少し難しいと感じておられる方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために、今日は、坐薬の上手な切り方について解説していきたいと思います。
坐薬を分割する前に知っておくべきこと
コンテナの中の隙間に注意
薬品名などが印刷されている坐薬の包装のことを、コンテナといいます。
このコンテナが膨らんでいる所に坐薬が入っているのですが、その膨らみ全てに薬が詰まっているわけではありません。
実際にコンテナを開けてみます↓↓
後方側に隙間がありますよね。
コンテナに入った状態で坐薬を1/2や2/3に分割する時、見た目の膨らみだけで半分にしようとすると、思っていたよりも後ろで切っていたということになりかねません。
後方に隙間があることを考慮して切りましょう。
水平方向に切るか、斜めに切るか
一般的には、坐薬は斜めに切るように指導されると思います。
なぜなら、アセトアミノフェン坐剤を作っている製薬会社がそのように説明しているからです。
斜め切りをすると、坐薬の先端側と後方側で薬の濃度にバラツキがある場合に、その影響を受けにくくなるというのがその切り方のメリットです。
しかし、斜めに切るのには、デメリットもあります。
斜めに切るデメリット
- 分割する位置が分かりにくい
- 切断面が大きくなる
- 分割が難しい
一方で、水平方向に切ると、それらのデメリットは軽減され、斜め切りよりも簡単に切ることができます。
また、アルピニー坐剤、アンヒバ坐剤、一部の一般医薬品のアセトアミノフェン坐剤は、基剤中のアセトアミノフェンの濃度が均一であるという報告がされています。※1、2
そのため、「濃度が均一であるアセトアミノフェン坐剤」については、水平切りも可能であるという意見もあります。※3
坐薬はコンテナから出して切る?コンテナに入ったまま切る?
坐薬はコンテナに入ったまま分割をした方がいいと報告されています。※4
私も実際にカッターナイフを使い、コンテナありで切った場合と、コンテナなしで切った場合を比較検討してみました。
コンテナありで切った場合
コンテナありで切る場合、切る位置にペンで印を付けておくことができます。
切る時に目印があり、とてもわかりやすいです。
また、支える手を添える部分が広く、手が滑りにくいため、安定して切ることができます。
コンテナ無しで切った場合
一方、コンテナから出して切った場合、体内に入れるものなので、坐薬に直接ペンで印を書くわけにもいかず、目安となるものもないので、切り位置が非常に分かりにくいです。
また、カッターナイフを入れた時に坐薬が削れてしまうため、小さな断片が発生しやすいです。
さらに、坐薬に含まれる油分が手につき、支える方の手が滑ってしまい、手を切る危険性があります。
坐薬を1/2で切る時はどこで切ればいいの?
アンヒバ坐剤の場合
100㎎、200㎎ともに、コンテナの色のついている先端側から2.65cmのところで切ると、1/2に分割することができます。※1
アルピニー坐剤の場合
100㎎、200㎎ともに、コンテナの色のついている先端側から3.00cmのところで切ると、1/2に分割することができます。 ※1
坐薬を2/3で切る時はどこで切ればいいの?
アンヒバ坐剤の場合
100㎎、200㎎ともに、コンテナの色のついている先端側から3.00cmのところで切ると、2/3に分割することができます。※1
アルピニー坐剤の場合
100㎎、200㎎ともに、コンテナの色のついている先端側から3.30cmのところで切ると、2/3に分割することができます。※1
坐薬はどの器具を使って切るのが正解?
坐薬は、カッター、はさみ、包丁などを使って切ることができます。
どれが切りやすいかを検証するために、それぞれの器具を使って、実際にアンヒバ坐剤(100)を1/2の位置で切ってみました。
カッターナイフを使って分割
包丁を使って分割
ハサミを使って分割
一番切りやすかったのは、カッターナイフです。
切る位置に正確に刃を当てることができました。
また、細かい破片ができることもなく、切断面もとても綺麗でした。
一番切りにくかったのは、ハサミです。
ハサミは、上下から力が加わるためか、先に中の坐剤が欠けてしまい、小さな断片がいくつかできてしまいました。
包丁については、切断は問題なくできましたが、坐剤に対して道具が大きすぎるため、安全面から考えても少し扱いにいように感じました。
と言うわけで…
私のオススメは、カッターナイフ!
ですが、論文報告によると、ハサミやカッターナイフなどの器具の違いによる分割の精度には差がないことが確認されています。※5
そのため自宅にあることや、扱い慣れていることなどの理由で決めてもよいかと思います。
汚染を防ぐために、清潔な器具を使用し、分割する前には手洗いをしてから行うようにしてください。
最後に…
今日は坐薬の分割方法について紹介しました。
● 坐薬は、コンテナから出さずに分割する方が切りやすいです
● アンヒバ坐剤を1/2に分割する場合は先端側のコンテナの端から2.65cm、2/3に分割する場合はコンテナの先端側から3.00cmの位置が目安になります
● アルピニー坐剤を1/2に分割する場合は先端側のコンテナの端から3.00cm、2/3に分割する場合はコンテナの先端側から3.30cmの位置が目安になります
● 坐薬を分割するときに使う器具は、カッターナイフが最も扱いやすく、綺麗に切ることができます
ただし、ハサミや包丁を使用して切ることもできます。
参考文献
※1 田山 剛崇, 他 : 坐薬分割法における分割方向とその主役分布に対する研究. 医療薬学, 32 : 1100-1104, 2006
※2 Yamamoto Y. et al : Studies on uniformity of the active ingredients in acetaminophen suppositories re-solidified after melting under high temperature conditions. Chem Pharm Bull, 63 : 263-272, 2015
※3 田山 剛崇 : 坐剤の1/2、2/3本投与とは?どう分割する? 薬事, 58 : 3313-3316, 2016
※4 榎本 剛, 他 : 坐薬の分割と保管の方法. 調剤と情報, 11 : 133-143, 2005
※5 田山 剛崇, 他 : 坐剤分割における分割重量誤差および分割スケールに関する検討(第2報) : 保護者を対象に. 日本病院薬剤師会雑誌, 43 : 191-194, 2007