♪さかなさかなさかな~魚を食べると~
あたまあたまあたま~頭がよくなる~♪
昔、こんな歌がありましたよね。
スーパーなんかで流れてたから
子どもながらに、魚ってすごいッ
って思ってた気がします。
今日は、そんな青魚の
- 何がすごいのか
- どうして妊婦さんや授乳婦さんに必要なのか
- どのくらい摂取すればいいのか
を紹介したいと思います。
青魚はどんな魚?
青魚とは、その漢字の通り
背の青い魚のこと。
例をあげると
鰊(ニシン)、鰯(イワシ)、秋刀魚(サンマ)、太刀魚(タチウオ)、細魚(サヨリ)、鯵(アジ)、鰤(ブリ)、間八(カンパチ)、鯖(サバ)、鰆(サワラ)…など。
たくさんありますが、
意外と馴染みのものが多い印象です。
青魚に含まれるDHA、EPAは摂取すると何がいいの?
青魚の魚油の中にはDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)という脂肪酸が含まれています。
これらの脂肪酸が、体の中でとても大切な役割を果たしています。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは、脳の記憶や学習能力にかかわる「海馬」や、目の網膜に存在していると言われています。
そのため、脳や神経の働きにとても大事な役割を果たしているのではないかと考えられています。
(冒頭の、魚を食べると頭が良くなる~♪の歌のフレーズはここから来ているんでしょうね)
EPA(エイコサペンタエン酸)。
EPAは、血栓をできにくくする働きがあるため、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を予防する働きがあることが分かっています。
また、脂質合成を抑え、高脂血症を予防する働きもあります。
どちらも体にとって大切な栄養素ですが、残念ながらDHAもEPAも、人の体の中では作ることができません。
食品などから積極的摂る必要があります。
妊婦さんや授乳婦さんにとって、大切なDHA、EPA
私、実は薬剤師をしていますが、薬局でお渡しするお薬(医師の処方箋が必要なもの)の中にも、DHAやEPAを含むものがあります。
それらは、通常コレステロール値の高い人が飲むもの。
そのため、DHAやEPAは、中年以降の方に必要な栄養素だと思われがちです。
でも実は、赤ちゃんや子ども、妊婦さんや授乳婦さんにも、とても大切な栄養素なんです。
それは、先ほどDHAの働きで述べたように、脳や神経の働きにとても大事な役割を果たしているからです。
まだ自分で食べ物を食べられない赤ちゃんのために、妊娠中も授乳中も、お母さんが食品などから、DHAやEPAを積極的に摂取することが、赤ちゃんの発達や成長につながります。
もちろん、母乳だけでなく、粉ミルクにもDHAの添加されたものもあります。
近所のドラッグストアに売っていた粉ミルク100gあたりのDHA含有量を一覧にしています。
DHA量以外にもミルクを選ぶ理由は色々あるでしょうから、参考までに…。
商品名 | ほほえみ | はいはい | はぐくみ | すこやか | アイクレオ |
---|---|---|---|---|---|
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | |
メーカー名 | 明治 | 和光堂 | 森永乳業 | ビーンスターク | グリコ |
DHA(㎎) | 100 | 80 | 70 | 70 | 0 |
ちなみに…それではEPAはいらないのか?ということになりますが、EPAも体内で一部DHAに変化することがわかっています。
どのくらいの量の青魚を食べればいいの?
それでは、青魚を食べてDHAやEPAを摂取するとしたら、一体どのくらいの量の青魚を食べればいいのでしょうか。
厚生労働省は『日本人の食事摂取基準2020版』の中で、DHA、EPAの摂取目安量を明記していません。
その代わりに、DHAやEPAを含むn-3系不飽和脂肪酸の摂取目安量を設定しています。
n-3系不飽和脂肪酸の摂取目安量は、18歳~49歳の女性で約1.6g/日です。
そして、妊婦さんも同じく1.6g/日、授乳婦さんは1.8g/日と定められています。
青魚(生)の可食部100gに含まれる、DHA、EPA、DPA、α‐リノレン酸、n-3系不飽和脂肪酸の量(㎎)を下の表にまとめてみました。
食品成分データベース (mext.go.jp)より抜粋
魚の種類 | DHA | EPA | DPA | α‐ リノレン酸 | n-3系不飽和脂肪酸 |
---|---|---|---|---|---|
マサバ | 970 | 690 | 160 | 76 | 2120 (2.12g) |
マイワシ | 870 | 780 | 170 | 59 | 2100 (2.10g) |
ニシン | 770 | 880 | 70 | 100 | 2130 (2.13g) |
サンマ | 2200 | 1500 | 310 | 280 | 5590 (5.59g) |
タチウオ | 1400 | 970 | 350 | 89 | 3150 (3.15g) |
サヨリ | 240 | 53 | 63 | 5 | 370 (0.37g) |
マアジ | 570 | 300 | 100 | 18 | 1050 (1.05g) |
ブリ | 1700 | 940 | 320 | 97 | 3350 (3.35g) |
サワラ | 1100 | 340 | 130 | 46 | 1700 (1.70g) |
上の表を見れば、サバ、イワシ、ニシンは100g弱ほど、サンマは35gほど、タチウオやブリは60gほどを食べれば、厚生労働省の定める、n-3系不飽和脂肪酸の1日摂取目安量に十分到達することがわかります。
サバなら1切れ、イワシなら2尾、サンマなら半身程度です。
なんだか食べられそうな気がしてきませんか?
ただし、これらの成分は、加熱することで魚油が流れだし、焼き魚や煮魚で約20%、フライで約50%ほど失われてしまいます。3)
効率よく摂取するためには、お刺身で食べるのが良いということになります。
ただし、食あたりの不安がある妊婦さんや、まだお刺身を食べられない小さいお子さんなどは、調理法にこだわらず、美味しく継続的に食べられる方法がいいですね。
まとめ
- 青魚の魚油の中には、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)がたくさん含まれている
- DHAは脳や神経の働きに欠かすことのできない、とても大事な役割を果たしている
- EPAは、血栓をできにくくする働きがありや、脂質合成を抑える働きなどがあり、薬としても使われている
- DHAやEPAは、人間の体では合成できず、食品等から摂らないといけない。特に、お腹の中の赤ちゃんや、乳児期の赤ちゃんは、自分で食品を摂ることができないので、お母さん経由での摂取が必要である
参考文献
1) Innis SM. Essential fatty acids in growth and development. Prog Lipid Res 1991; 30 : 39─103
2) Peng Y,Zhou T,Wang Q, et al :Fatty acid composition of diet,cord blood and breast milk in Chinese mothers with different dietary habits.Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 81:325-330,2009
3) Mechanisms of Docosahexaenoic and Eicosapentaenoic Acid Loss from Pacific Saury and Comparison of Their Retention Rates after Various Cooking Methods
(Cheung LKY, Tomita H, Takemori T. J Food Sci., 81:C1899-907, 2016.)